たくさんのにおいの記憶がある。
黒豆を煮たり サツマイモを焼いたり
野菜を煮込んだり おでんを温めたり
いつも石油ストーブの上には何かしら乗っていた。
母はその真ん前に陣取り
毛糸の帽子をかぶって鍋を見張っていた。
それなのにいつも黒豆はカチカチに張り付き
サツマイモも煮物も
一部が焦げ始めていることが多かった。
別のことでいつも頭はいっぱいだったんだろうな。
ストーブをつけるときと消すときの
オイルのにおいも どことなく懐かしくて
もう手の届かない遠い思い出。