母の妄想は私が子供の頃から毎日だったので
アルツハイマーが併発していることに気付いたのは
けっこう遅かったかもしれない。
通帳がない!
かばんがない!
誰かが入ってきて持っていった!!
と毎日朝から晩まで叫んでいるので
いつもの妄想の「質」が変わったかしら
くらいにしか思わなかった。
決定的だったのは父への暴力。
二人だけの時間にはだんだん増えていたようだったが
私がいるときでも手を上げるようになり
孫が来ているときですらやるようになって
「おばあちゃんがヘン!」という言葉を聞いてから。
近くにいすぎて麻痺していた現実が
遠くから来た人たちによって
その異変に気付かされたのだった。