病院から深夜の電話で父と二人
あわててやってきた病室には
母のベッドがぽつんと一つ。
ずっとつけていた酸素マスクは外れている。
あれ?どうしたんだろう。
状況が読み込めなくて
いつものように母に話しかける。
手を握るとあたたかくて
ふんわりと軽くてやわらかい。
目の端に涙をいっぱいためて
今にも大きなため息をつきそうな表情。
しばらくするとドヤドヤっと人が入ってくる。
院長先生が心電図が平らになったことや
目にライトを当てて瞳孔が動かないことを
丁寧にゆっくりと説明している。
そこで初めて私は
母がすでに息を引き取ったのだと気が付いた。
それでもまだ母の手はあたたかくやわらかかった。