父はいつもと違うことを極端に嫌がるので
食卓の風景は判で押したように同じ。
ある日洗い物のときに
父愛用のマグカップの取っ手がぶつかり
欠けてしまった。
同じ形を何代も買い続けているのだが
ちょっと売り場が遠いので
なかなか買いに行けない。
代わりのカップに父が慣れてきた頃
うまい具合に用事ができて
そこまで行く機会があった。
いつもと同じ色同じ形のカップが
ラッキーなことに一つだけ残っていた。
いそいそと買って帰り
さっそく夕飯のお茶を入れて出してみる。
気付くかな?
テレビを見ながら当たり前のように
新しいカップで飲んでいる。
たまりかねて聞いてみる。
カップ変わったの分かる?
え?ああ本当だ。
やっぱりこっちのほうがいいね。
これねぇ… と長々とカップの良さを語り続ける。
ほんならすぐに気付きなさいな。