人が亡くなると
その人が大切にしていたものが
全部いきなりゴミになる。
「好きなものを持って行って」
そう言われたところで何もなかった。
本人がいないのにモノだけあっても意味がない。
その人が生きた証として残す
たった一つのモノとは何だろうか。
魂が宿り続けるモノはどれだろう。
それを知るには
その人がどう生きて何を大切にしていたのかを
理解していなければならない。
母が執着していたモノは山ほどあったけど
人に渡せるようなものは一つもなかった。
それでも腕時計を修理に出して
きれいな箱に入れ直して
形見の一つとした。
私の手元には
母が身に着けていた結婚指輪を。