歳を重ねて解ることの一つは
「ああ あのときこんな風に助けられていたのか」
という他人の恩。
若いときは他人の親切も優しさも
湯水のように消費してありがたみすらも覚えず
それが当たり前くらいに思っていた。
誰よりも私を助けてくれたあの人の
出会ったときの年齢に追い付いた。
思い返してみれば表面的な言葉や行動のみならず
あまりにもたくさんの配慮と気遣いと
愛にあふれていたことにここに来て気がつく有り様で
いまだに足元にも及ばない。
記憶のなかでオセロのように
一つ一つが意味を変え新しい価値を見出す。
歳をとるとこうやって
世界はゆたかに深みを増していくんだなと
じっくりゆっくり反芻する日々。
間違いなくその人とは
いまでも一緒に生きている。
私の今の毎日を伝えたら
きっとすごく喜んで乾杯してくれるだろうな。