この混沌とした時代に
事故にも事件にも災害にも遭うことなく
自ら命を絶つことも選ばずに
あたたかいベッドの上で
穏やかに関係者に看取られるとは
この上なく幸せなことではないだろうか。
黒澤明監督の映画「夢」(1990)。
美しい映像のオムニバスで
最後の話が「水車のある村」。
安曇野の流れを背景にした葬送の祭り。
祭り。
天寿を全うした村人を
長年ともに暮らした仲間たちが
踊って歌いながらめでたいめでたいと
心底歓びを体現しながら行進する。
ポカンとしている旅人に
100歳を超える長老の言葉。
「本来葬式はめでたいものだよ」
「よく生きて
ごくろうさんと言われて死ぬのはめでたい」
最近ふと思い出して観なおしてみると
安曇野の水が染み入るような納得感。
きちんといのちを生ききることは
自分もまわりにとっても
こころを満たし合う。
そしてそれは実は
とても稀有なこと。
あえて今の自分が加えるなら
ていねいに看取ることができてこそ とも。