こころ遊多加な介護へ

暮らしといのち

桜が咲いたら【追記】

部屋の窓から正面の山は桜並木で

もうすぐ山の色が変わる季節。

 

この部屋に来た頃は父も元気で

一緒にその山に登って写真を撮ったり

ときに父は一人で港まで

桜を撮りに行ったりしていた。

 

だんだん一人で出かけられなくなり

一緒に登る山もしんどくなり

帰り道で胸を押さえて座り込む。

 

心筋梗塞で搬送された翌年

どうしても桜を見たいと言う。

最後かもしれないとの思いから

無理を承知で山に連れて行った。

 

入院で筋肉も落ちてしまい

一歩一歩がたどたどしい。

父の背中を全力で押しながら

行って帰って20分の道のりを

2時間かけて往復した。

 

やがて

部屋から出ることもできなくなって

ほぼ寝たきりになった父に 私は

啓翁桜の鉢を買ってきた。

向かいの山が色づくのを眺めながら

ベランダでは鉢の桜がささやかに開く。

 

今年父はついに

景色どころか鉢の花さえ見れない場所にいる。

写真に撮っても動画にとっても

この桜の存在意義は伝わらない。

 

ずっと枯れ枝のように見えていた啓翁桜の

つぼみがふくらんで濃いピンク色が見えてきた。

日の当たらなかった昨年の工事中も

年始の強い寒波も耐え抜いた今

あたたかい日差しの中で開こうとしている

たくさんのつぼみ。

 

花が咲いたら鉢を抱えて

病院まで行こうかしら。笑

そうしたら父はきっと

「へえ~わざわざ持ってきたの?」と

いつものように

ひとごとみたいに驚くんだろう。

 

 

【追記】

2023/3/9

16時頃 

18時 ついに開花。

3月11日

3月15日ガラス越しに。

 

 

ykaigo.hatenablog.com