母は関係念慮が大変ひどく
目に入るものすべてが自分と関わり意味があって
しかもそれは大変ネガティブで
「全世界が敵!」みたいな人だった。
この店の人はこういう人がいて
この道ではこんなことがあって
ここに来たら必ずこうなる
ということをブツブツと話し続けた。
私は着いて歩きながら
その言葉を全部受け止め
本当にそうなのか検証し
そうではないことを
必死に一つずつ母に伝えていた。
ずっと長いことそんなことをしていた気がする。
このところ街中がとても軽くて遠くて
世間が私の関係ないところで
自由に生きていることがとても気が楽なのは
母が口にしていた街の意味が
ほろほろと解かれてきたからのように思う。
そんなことないよと母に言いながら私は
母と同じ世界をずっと生きていたのかもしれない。