この部屋に来たときの父は
まだまだ体力もあった。
毎日夕方には階段をのぼり降りしていた。
実家処分のときには
二人で本棚をバキバキに壊したのも
記憶に新しい。
母は老健からの病院で
一緒に暮らした時間がほぼない。
だから老いも看取りもどこか遠くの出来事で
刻一刻と変わっていく様子を
この目で確かめたわけではなかった。
だから父の老いは
完全に把握しておきたかったのだ。
人の一生(特に老い)を
全部見ることができるのは
親だけだもんね。
生きるって大変。
食べることもお風呂も寝ることも
本人にとっては一大事。
本当に一苦労って感じ。
父の俺様気質が年々削がれていくことが
私としてはそれはそれで
溜飲も下がるし日々は平穏になるし
いろんなことがスムーズに動かせるし
割と良いことばかりでは?
とひそかに思っている。