東京に住んでいたとき
古いビルの5階に暮らしたことがある。
都会のど真ん中なのに
広くて静かで自然もあって
人を呼ぶにもどこに行くにも近くて便利で
とても気に入った部屋だったが
エレベーターがなかった。
私は当時まだ若く
エレベーターがないことは
まったく苦ではなかったが
引越屋さんや配送の方には
いつも悪いなぁと思っていた。
ある日
いちばん奥の部屋の方があいさつに。
私と同世代くらいの女性とお母様の二人暮らし。
お母様は足が悪く今でも不便な毎日だから
この先のことを考えて
転居することにしたのだという。
この建物に
一番長く住んでた方々だった。
その感覚は今なら痛いほど分かる。
エレベーターがあってもなお
1階で暮らした方が楽だろうと思うもの。
人は土の気から離れると
具合が悪くなるというが
確かに父が倒れたのも
ここに来てから。
1階の部屋に越したら
もう少し元気になるかな。