高齢者が見ている世界は
フレームが固定された
いわば紙芝居のような視界だろうか。
テレビでもスマホとも違う
ゆっくりと同じ画が
くり返される世界。
父は認知症ではないが
もともと自分から行動を起こすタチではなく
目の前に起きたことや
与えられた環境に文句を言わずに
従順に従っていくタイプ。
父のその紙芝居の枠に
登場する人物は決まっていて
叔母(妹)であり母であり私であった。
施設でじっと空をにらんでいた
父の姿を思い出して考える。
そのフレームに人はたくさんいるけど
知っている人はいない。
さびしいわけではないだろうけど
物語は進まない。
だから私がフレームインした瞬間に
目が合ったのも不思議ではない。
待っているわけではないんだろうけど
ずっと探しているんだろう。
もうちょっと面会に行こうかな。
話すことは別にないけど
ただフレームインするだけでいいのかも。