こころ遊多加な介護へ

暮らしといのち

おひなさまを飾る

実家にいたときには

年に一度の大仕事よろしく

家族全員で時間をかけて

飾り付けた記憶がある。

 

子どもの頃は「御道具」の

ミニチュアの器を並べたり

婚礼道具一式の引き出しを

開けたり閉めたりするのが楽しみだった。

 

今の時代には許されないような

のんびりしたゆたかな時間だったなぁ。

 

中から出てきた古新聞は2016年。

つまりここに移って初めての3月に

私一人で飾り付けた。

そのとき母はすでに5年以上入院中で

父はなぜ要介護とれないの?レベル。

 

翌年は母が危篤になり他界。

その翌年は父が倒れ

ガッツリ在宅介護が始まってしまい

おひなさまを思い出す余裕はなかった。

 

そして今年。

まだ喪中なので迷ったけれど

もう一年そのままにするのは違う気がして

重い腰を上げる。

 

実は少し前から

どこかのタイミングで

人形供養に出そうかとも考えていた。

知り合いの業者が定期開催しているので

いつでも持ち込むことはできる。

 

でも50年以上前に

祖父が私のために買ってくれて

毎年父と母と大騒ぎして飾った想いの残る

人形たちを私の手で処分する勇気がまだ出ない。

 

単なるモノでもないしゴミでもない。

家族の記憶と歴史そのものだから。

 

その温度感を確かめたくて

あらためてていねいに飾ってみた。

母方父方両祖父母と両親がいる

仏壇からも見えるように。

 

これだけ時間がたっているのに

虫もついていない。

凛とした たたずまい。

 

お内裏様の刀は今でもさびることなく

きちんとサヤから抜くことができる。

どれもこれも細やかでていねいな仕事が残ってる。

 

やっぱり来年もここで飾ろうかな。

 

ぼろぼろの段ボールだけ処分して

保管の方法を新しくすることにした。