母が車いすに乗るようになったときは
けっこうなショックだった。
廃用症候群、すなわちもうこの先は
歩けなくなるということを意味していたから。
老健では歩き回って他人のベッドで寝ていたり
病院では回廊型の廊下を延々
まわり続けていたりしていた母が
ほぼ一日ぼんやり車いすに座っている姿は
なんとなく違和感すら覚えた。
ただその頃には
ずいぶん足の運びもおぼつかなくなり
つんのめって転倒をくり返していたので
骨折したり 徘徊したりしないというだけでも
安心感は大きかった。
車いすを押しながら母に話しかけつつ
ぐーるぐーる病院の中をまわっているときも
妙な安堵があって悪くなかった。