数年ぶりにコンタクトを取った知人男性が
「母が亡くなったんです」と話してくれた。
すでに数年過ぎているらしかったが
依然生々しい衝撃の中にいる様子が痛々しかった。
そのとき私は
どうしてそんなに時間も経っているのに
抱え続けているんだろうかと不思議だった。
だがあの養老孟司先生でさえ著書の中で
お父様の死を受け入れるのに
40年近くかかったと書かれている。
文鳥を逃がすシーンは胸が痛んだ。
そして自分が母を亡くしてみて初めて
「肉親の死の意味」というものを知る。
当たり前にいたはずの存在が
突然消えてしまうどうしようもなさ。
ずっと欠落を抱えていくことのむなしさ。
このポッカリあいた喪失感は
この先も「母のかたち」のまま残るんだろう。