母は若い頃
いつも「別の人生」を探していた。
自分の結婚がいかに不幸で
配偶者がいかに頼りないか
他にも縁談があってその人と一緒になればよかった
と毎日私は聞かされていた。
母の時代は女が能動的に生きることには
やたらハードルが高かったし
母のような田舎の小娘には
できることもなかった。
最近になって父に聞いてみたら
確かに「あんまりだわ」っていうことも多くて
あながち母の嘆きは間違っていなかった。
でも別の選択をしていたら
どうだったんだろうとときどき思う。
母の最期はあれでよかったのか
介護の選択肢も
別の方法はできなかっただろうか
他のやり方を選んだら
どんな終末期を迎えただろうか。
たったひとつの選択で
人生は大きくシフトしてしまう。
その舵を握っている自分の
選択は正しかったのだろうかと
母にも 父にも 後見でも
答えの出ない問いを考え続ける。