藤山寛美さんが
姑役(女形)を演じた作品がある。
その中に同居の息子夫婦に遠慮して
毎朝夫の墓参りに行き
わざわざ遠回りして時間を潰して帰ってくるのだと
旧知の友に告白するシーン。
「他にどこに行け言うねん。
この歳になって行くとこなんかあらへん」
と悔しいような寂しいような複雑な表情の
泣き言が印象的。
高齢者がときどきぽつりと口にする
「別にやることなんてないし」
っていう言葉を聞くと
この寛美さんのいたたまれない姿が目に浮かぶ。
私も歳を重ねてやっとつくづく思うようになったのが
「確かに生活ってそんなに面白いことなんてないよな」
どうしても笑いとかオチを求めたがったり
ドーパミンやエンドルフィンを出して
快楽にひたりたいのが人の業だが
生活ってそもそもそういうことじゃない。
逆に「そもそも面白くないのが生活」
って分かっていれば
不満が出ることもなくなるし
ならばせめてていねいにやるか とか
欠かさず記録に残しておくか などと
ひと工夫することも苦ではなくなる不思議。