父は自分から何をどうしたいと
言い出すことはなかった人だが
たった一度だけ
「どうしてもお願い」と私に頼んだ。
その一週間後に入院、施設入所となる。
つまり自宅において
最初で最後の意思の発露。
そしてそれは初めて
自分以外の人ための行動だった。
私が代わりに行ったのだけれど
想いは叶わずじまい。
そのことがずっと気になっている。
ここがバチッと決まったら
本当にドラマチックだったんだけど。
これはやっぱり私が引き受けて
ちゃんと実現させるんだろうな。
もう父はあちら側で
当時よりずっと自由な力を得て
母や祖父母たちとも再会し協力して
私が実現させるまで応援する みたいな
ヘンテコリンなかたちで進めるんだろう。
想いを引き継ぐ。
家族ってつまりこんなふうに
生きていてもそうでなくても変わらずに
連綿と想いを引き継いでつないでいく
っていう関係性のことなんだろう。