8人兄妹だった母。
祖父母が亡くなった後も
実家はしばらくそのままになっていた。
まだ私は学生だった頃。
ある日母宛に分厚い封書が届いた。
当時はまだすべて手書きで
紙はわら半紙のような色をしていた。
今思えば遺産分割協議の書類だろうと
想像に難くないのだが
母がヒステリー出しまくりで
私はその件に一切触れられなかった。
返信を出したのかどうかも分からない。
ずいぶん後になってから
実家に一番近かった叔父が
すべて引き受けて墓も動かしたことを知る。
相当な手間と時間とお金がかかったはずだが
穏やかで飄々としている叔父からは
請求や恨み言は一切なかった。
その後 母が亡くなった手紙を出したとき
音沙汰ない親戚ばかりの中で
父ではなく私に電話をかけてきて
「さみしいねぇさみしいねぇ」と
電話口で泣いてくれたのはこの叔父だけだった。
いまでも盆と正月に近況報告を送り合うのは
母方の親戚ではこの人だけ。